夏の風物詩といえば必ず挙がるもののひとつがスイカでしょうね。
この季節が苦手な私にとって、冷えたスイカをほおばるのは至福のひと時ですが、時々公園などで食べ散らかしたスイカの皮や種が捨ててあるのを見ると、ああ、もったいないなと思います。まあ、その話は後回しにするとして……
私を育ててくれた祖母の家で見た光景で今でも頭にはっきりと残っているものがあります。
夏のある日、おけにスイカの赤身をたくさん入れ、帽子をかぶった幼い子がスイカまみれになってその中で遊んでいるというものです。おかしな光景でしょう。
しかし、これは胎毒、つまり乳幼児の皮膚炎などの治療法のひとつなんです。もちろん私はそれを見ながらおいしいスイカのつまみ食いもしましたけれどね。
スイカに三角形の切り込みを入れ、独頭蒜(にんにくの一種)を差し入れて蒸すという利用法もありました。これは胃腸炎や下痢に効きます。昔の中国は衛生状態が良くなかったですから、しばしばコレラ患者もあらわれ、その場合の下痢止めにも用いていました。
西方から伝わったことからその名がついた西瓜(スイカ)の薬膳の観点から見た効能は、清熱解暑、利尿、除煩止渇(イライラを抑え、渇きを止める)などです。現代医学の観点からすれば、降圧、動脈硬化改善などに役立ちます。
捨ててある皮と種がもったいないと感じた冒頭の話につながりますが、赤身だけでなく、種は煎じても炒ってもいいですし、乾燥させて枕に入れる利用法もあります。
赤身と外皮の間の薄緑色の部分は「西瓜翠衣」と呼ばれ、強い利尿作用が認められてきました。
赤身、赤身と書いてきましたが、黄色いスイカよりは赤いスイカの方が薬用効果が高いと思います。赤身と黒砂糖を煎じて服用し、月経不順の改善を図る「西瓜秧」のような利用もあります。
また、外皮を細く切って乾燥させた「大腹皮」は、腹水を減らす等に使うことができます。
添付した写真は何かおわかりですか。私が自宅で作った「大腹皮」です。
日本ではスイカの皮を漬物にする方もいらっしゃいますね。
スイカは本当にむだなところがない有用な夏の食品です。
注意することと言えば、体を冷やしますから、子供やお年寄り、胃腸の弱い方は食べ過ぎに気をつけるということでしょうか。
スイカを食べながら夏の残りを楽しんでください。皮や種もむやみに捨てないように。ご自分の身体のためにも、自然環境を汚さないためにも役立ちますよ。
楊秀峰