もう20年以上にわたって気功や養生法をご指導しているグループの教室に向かう道すがら、私にとってとてもなじみ深い木がおいしそうな実をつけているのを見つけてうれしくなりました。なつめです。ブログでもたびたび書いた植物ですが、祖母もよく食していたこのすぐれた果実について、また触れたいと思います。
中薬や薬膳についての古典である『神農本草経』では、なつめは上品(最もすぐれた薬)に配され、「脾胃を養い、手足の十二経の流れを助け、目・口・鼻・耳・肛門・尿道などの滞りを減じ、気血を補う」というような記述があります。
漢方薬としては大棗(たいそう)と呼ばれ、種も薬として使われます。おそらくほとんどの日本人が知っている「葛根湯」にも配合されています。種は不眠症の治療などに用いられますね。
タンパク質、脂質、カルシウム、カリウム、鉄、マグネシウム、ビタミンC等を含み、現代栄養学から見ても非常にバランスが良く、以前書きました通り、「諸薬の調和を図る」と他の薬材のバランスを助ける働きでも知られています。
中国を含むアジア各地に広く見られ、中国では「桃三、杏四、梨五、棗は当年に金になる」と言われるほど盛んに栽培されてきました。
日本では庭木ぐらいとしてしか知らない方が多いので残念ですね。時々「夏芽」と書いてあるのも見ますが、これは夏に芽を出すとしてつけた日本固有の名称なのでしょう。
さて、私の教室に数カ月前から通われている50代の女性のお話です。
この方は自己免疫疾患のひとつである膠原病を患っていて、様々な薬も服用しているのですが、長年めまいがひどく、夜もよく眠れず、血液検査の結果もなかなかよくならないということでした。
そこで私は造血・補血・安神などの作用が知られるなつめをさっそく勧めました。食べ始めてから2週間ほどで病院の検査があったのですが、担当医の方が驚くほど血小板数などが改善していたそうです。また、めまいもなくなり、ひさしぶりによく眠れるようになったとのことでした。もちろんなつめを続けて召し上がっています。
中医(薬)学からすれば充分に予想された好結果で、「薬食同源」のいい例がまた見られたと私も喜んでいます。
なつめは、おかゆや煮物(日本で人気がある韓国料理の参鶏湯〔サムゲタン〕にも入っています)だけでなく、薬用酒や薬用茶の材料にもなりますし、乾果も売られています。
祖母が重んじていたこの有用な果実に、日本の方がもっと親しんでくださればいいのにと心から思っています。食の宝物は、ほんとうにあなたのすぐ近くにあるものですよ。
楊秀峰