年に数回、故郷の中国・北京に帰ります。家族や旧友に会うのもひとつの目的ですが、
中医学や健身、美容などの分野でどんな新しい動きが出てきたかを知るのも、もうひと
つの大きな楽しみです。
今回もゴールデンウイークを利用して2週間ほど帰国しました。
中国の経済が不安定とはいえ、余裕のある層は確実にいますから、エステサロンなどは
美白、しわ取りなど次々に出てくる新趣向を試そうという人でけっこう盛況です。かか
る費用もずいぶん高くなりましたけどね。
さて、いろいろ見て回った中で印象に残ったのは、ある伝統薬への注目度の高まりでし
た。
清熱薬として昔から知られる穿心蓮です。東南アジアやインド、中国南部に自生し、肺
熱による咳嗽や呼吸困難、化膿による喀痰、咽喉痛、頻尿や下痢、そして毒蛇の咬傷の
治療などに使われてきました。
近年、その抗菌・抗ウイルス、抗炎症、浄血作用が注目され、呼吸器系、消化器系、泌
尿器系の異常から皮膚炎などに用いられるだけでなく、がんやHIV治療にも有望視され
ています。使用の形態も粉末、錠剤、カプセル、注射と出揃っています。
穿心蓮の学名はAndrographis paniculata NEESで、欧米でもアンドログラフィスとして
一般にも広く利用されるようになっています。
日本の関連業界が見逃すはずはないだろうと思って日本に戻ってから調べてみたら、や
はりすでにサプリメントが販売されていました。
生薬としての穿心蓮は長く用いると胃気を損傷する副作用がありますが、有用な植物で
あることは間違いありません。
もともと全草を使うものですから、新しい薬膳メニューでも考えられないかしらと思案
中です。
楊秀峰